旅路
藤井風
歌詞を考察
うたばなし
旅路【藤井風】「忘れてね」から「全てを愛す」へ、どうつながる?
はかせ歌詞を研究しているキャラクター
ひなたJ-POP が好きな聞き手のキャラクター
ひなた
歌い出しでいつも引っかかるの。最初に「忘れてね」って頼んでるのに、最後は「全てを愛すだろう」でしょ。順番に教えてほしいな。
あの日のことは 忘れてね
幼すぎて 知らなかった
はかせ
歌い出しの「忘れてね」は、相手に頼む形だね。この「忘れ」は形を変えて何度か出てくるから、そこを追っていこうか。
ひなた
頼んでるのに、すぐあとの「幼すぎて 知らなかった」が、なんだか小さな声に聞こえるの。
「忘れてね」は「忘れるね」に変わる
はかせ
小さな声、か。その先で恥ずかしくて消えたいと言っていて、消えたいのは「あの日」じゃなくて自分のほうなんだ。それを「けど」で受けて、「大丈夫」と言い切るところまで進む。
ひなた
「あの日」に何があったのかな。誰に向かって「忘れてね」って言ってるの?
はかせ
そこは歌詞に出てこないんだ。「幼すぎて」と並んではいるけど、出来事も相手も書かれていない。
あの日のことは 忘れるね
ひなた
あっ、始まりは同じなのに「忘れるね」になってる。今度は自分が忘れるほうなんだね。
はかせ
語尾ひとつで、頼む側から忘れる側に回ったんだね。すぐあとに「彷徨ってた」、さまよってた、が来て、迷っていたのは自分だけじゃない話に広がる。恥が一人で抱えるものじゃなくなっていく、と読めるところだよ。
ひなた
でも「知らなかった」って、恥ずかしいままじゃない?
はかせ
宇宙が「教室」なら、と仮定を置いて、最後は「学び」が続く、で閉じるんだ。その仮定の中なら、「知らなかった」は恥じゃなく学ぶ途中のこと、と読めるね。
サビの「忘れたり」は、頼みとは別の形
はかせ
サビの手前で「知らなかった」がもう一度出る。いつか終わりがくると「知らなかった」、と過去形で言うから、今は知っている側から振り返っていると取れるよ。その先のサビで、「忘れ」が三度目に出てくる。
誰かを愛したり 忘れたり
色々あるけど
ひなた
ここでまた「忘れたり」が出てくるね。これも「あの日」のことなの?
はかせ
前に付いている言葉が、「あの日のことは」じゃなくて「誰かを」なんだ。形も頼みや宣言じゃなく、「愛したり」と並んで、「色々あるけど」にまとめられている。
ひなた
でも、忘れるがまだ残ってるなら、あの日をずっと引きずってるってことじゃない?
はかせ
残っているのは「忘れる」という動きで、サビの「忘れたり」の前に「あの日」は無いんだ。歌い出しでは恥ずかしさとひとまとまりだったのが、ここでは「愛したり」と並ぶ旅の出来事の一つ、という読みだよ。
ひなた
その「色々あるけど」のあとは、どうなるの?
はかせ
「色々あるけど」のあと、「あーあ」と懐かしむ行を挟んで、「全てを」が2回重なるよ。先が「笑う」、次が「愛す」。
2番は「お元気ですか」で始まる
ひなた
2番に入ったら、いきなり「お元気ですか」なの。急に丁寧になるのはどうして?
はかせ
1番とサビでは、です・ますの行は無いんだ。使うのは2番のこの前半だけで、「忘れ」も一度も出ない。代わりに、町は相変わらず青春だとか、永遠を求めているとか、変わらないものの言葉が並ぶよ。
ひなた
様子を聞くのって、相手のことを覚えてるからだよね。「忘れてね」と、ちょうど反対の向きに聞こえるかも。
はかせ
うん。1番の頭は忘れることを頼む言葉で、2番の頭は様子をたずねる言葉。どちらも歌の頭に来るのに、向きが反対なんだよね。
「無いけど」のあとに、意味があると言う
果てしないと思ってた
ものがここには無いけど
はかせ
2番のサビの手前だね。1番では仮定の形だったのが、ここで「思ってた」に変わる。そう見えても、から、そう思っていた、の過去になって、その「もの」が「ここには無い」と言われるんだ。
ひなた
ここに無いものって、青春のことなの? さっき出てきたし。
はかせ
そう取る読みもあるけど、2番の頭で町は「青春」だと言っていたよね。「ここ」がその町なら、町の青春と、ここに無いものは同じとは言い切れないんだ。
全てに意味はあるから
ひなた
無いって言ったすぐあとに、全部に意味はあるって言い切ってる。
はかせ
見てきたもの、触れてきたものの全部にだね。「無いけど」と受けて意味を置くから、無いことと意味を分けて置く読みになるよ。前はあったのか、もともと無いのかは、歌詞は言わない。
ひなた
無いのをちゃんと認めて、そのまま先にすっと歩いていくみたいだね。
2番のサビは「誰か」が「何か」に変わる
ひなた
2番のサビでも「忘れたり」って残ってる? 1番のサビと何か違うのかな。
はかせ
残っているよ。「あーあ」から「色々あるけど」までの前半4行で、1番と違うのは「誰かを」が「何かを」になった一語だけ。「何かを愛したり 忘れたり」の形はそのままなんだ。
ひなた
「誰か」って人だけど、「何か」だと物とか出来事も入るよね。見てきたもの全部のあとだから、相手がふわっと広がったのかな。
はかせ
すぐ前が、見たり触れたりしてきた「全て」の話だからね。相手が人から、出会ってきた物事まで広がった、と取れるよ。
「あなたに返す」を通って同じ行で閉じる
これからまた色んな愛を受けとって
あなたに返すだろう
はかせ
2番のサビは、「あーあ」のあとが入れ替わるんだ。1番の懐かしむ行と笑う行が消え、「受けとって」「あなたに返す」と「光」の行が入って、1行多くなる。終わりの行は1番と同じ。
ひなた
「あなた」って誰なの? ここで急に出てくるよね。
はかせ
「あなた」は曲全体でここ一度きりで、歌い出しや2番の相手とつなぐ言葉が無いんだ。誰かは決められないけど、返す先が出てくる、というところを見ておきたいね。
全てを愛すだろう
はかせ
1番でも2番でも、「色々あるけど」のあと、何行かを挟んで、この同じ行に行き着くんだ。だから「全て」は、愛したり忘れたりする旅のいろいろを受けている、と読めるね。
ひなた
最初は頼んでたのに、最後は「あなたに返す」になってる。向きが変わってるのが気になるの。
はかせ
頼む側だったのが、「返すだろう」と、これから渡す側に回ると言うんだね。そのうえで、1番と同じ「全てを愛すだろう」に戻って終わる。
ひなた
じゃあ、最初の「あの日」は、その「全て」に入るのかな。入っててほしいけど。
はかせ
入っててほしい気持ちは分かるよ。書かれてはいないけど、「忘れてね」と同じ4行に「旅路は続く」があるんだ。
はかせのまとめ
問い
「忘れてね」から「全てを愛す」へ、どうつながる?
答え
「忘れ」は頼みから宣言へ形を変え、サビでは「誰かを」の後で「愛したり」と並び、「色々あるけど」を受けた「全てを愛すだろう」へつながると読める。「全て」に「あの日」が入るかは書かれていない。
次に聴くときは
1番のサビの「誰かを愛したり」が、2番のサビでどの言葉に替わるかを聴き比べてみて。
楽曲情報
| 曲名 | 旅路 |
|---|---|
| アーティスト | 藤井風 |
| 作詞・作曲 | 藤井風 |
| 発売 | 2021年3月1日 |
