うたばなし

会話で読む歌詞考察

鳩かもめ

My Hair is Bad

歌詞を考察

鳩かもめ【My Hair is Bad】その幸せって、なんでここに無かったの?

2026.10.244分で読めます

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その幸せって

なんでここにはなかったんだろう?

My Hair is Bad『鳩かもめ』より

しおり

この問い、ノートに書き写したんです。「なかった」のところで止まって、なんで無かったのかを言う言葉が続かないまま、歌が先へ進んでいくのが気になって。

はかせ

「なかった」で止まったんだね。手前の言い方と比べると、どう違って聞こえたのかな。

しおり

手前の言い方は、ふわっと続いていく感じだったのに、ここだけ急にぴしゃっと言い切りが置かれた気がして。

はかせ

その「なかった」の反対の「あった」が、1番には二回出てくるんだ。

1番の「ここ」には、何がある?

はかせ

1番は、部屋とそのまわりの話から始まるね。蛸の公園も、カレンダーの数字の丸や書き込みも「あった」で語られる。「幸せ」という言葉は、1番にはまだ出てこないんだ。

もう嫌だ

ここにある思い出

My Hair is Bad『鳩かもめ』より

しおり

この「ここにある」も、公園やカレンダーの「あった」と同じ仲間ですか?

はかせ

似てるけど、ひとつ違うんだ。「ここ」という言葉は、このサビで初めて出てくる。しかも「ある」と今の形で言われていて、そこにあるのは思い出なんだよ。

しおり

1番の「ここ」に置かれているのは、幸せじゃなくて思い出なんですね。

幸せが最初に出てくる形は?

はかせ

2番に入ると、昨日の話をする「君」と、その人の味方をする「僕」の場面になる。「幸せ」という言葉が初めて顔を出すのが、この2番の前半だよ。

しおり

初めての「幸せ」は、どんな言い方で出てくるんですか?

妬む気持ちなんて正直1mmもなかった

ちゃんと幸せになってねって

My Hair is Bad『鳩かもめ』より

はかせ

相手に向けた「なってね」なんだ。しかも、それを二人とも本気で思っていた、と続く。幸せは二人のあいだにあるものとしてじゃなく、相手がこの先なってほしいものとして出てくる、と読めるね。

しおり

「なってね」って、まだそうなっていない人に頼む言い方ですよね。

続けた先の幸せは、今は無いの?

これ以上続けたって

誰も幸せになんない

My Hair is Bad『鳩かもめ』より

しおり

2番のサビのここ、最初に聴いたときは「今の二人には幸せが無い」って言っているように聞こえました。でも、手前に「これ以上続けたって」があるんですよね。

はかせ

そうだね、「これ以上続けたって」が条件になってる。もし続けても、その先で誰も幸せに「なんない」と言ってる。今ここに幸せが無いとは言ってないんだよ。

しおり

でも、続けても幸せにならないなら、それって今も無いのと同じじゃないですか?

はかせ

中身で同じことだと受け取るのは自然だと思うよ。ただ言葉の上では、ここでもまだ「幸せに」のあとが「なる」を打ち消す形で、「無い」とは一度も言われてない。

「なる」が、初めて「なかった」に

はかせ

2番のサビが終わると、昔、飲みながら話したことを思い出す部分に入るよ。

飲みながら話したの覚えてるよ

「幸せになるから、幸せになって」

My Hair is Bad『鳩かもめ』より

はかせ

ここの「幸せ」は二つとも、あとに「なる」が付いてるね。ここまでの「幸せ」を並べると、「なってね」「なんない」、そしてこの二つ。四回とも「なる」の形なんだ。

しおり

じゃあ、最初に見た「ここにはなかった」だけ、形が違うんですか?

はかせ

「なる」はまだそうなってない所から移る言い方で、幸せはずっとこれから先のものとして言われてきた、と読める。それがここで初めて、あるか無いかの形で「なかった」と言われるんだ。

しおり

でも「幸せになる」って、ふだんもよく使う言い方ですよね。形がそろっているのに、意味を読みすぎていないですか?

はかせ

「幸せになる」は決まった言い方だから、形に意味を読まない取り方も成り立つよ。数えて確かめられるのは形の変化までで、「なかった」は妬む気持ちとこの幸せの二回だけ。「先のもの」と重ねるのは読みなんだ。

しおり

すぐあとの「そうだね」と「やっぱり鳩かもめだ」は、その問いへの答えにはならないんですか?

はかせ

どちらも短い言い当てだよね。理由を説明する文は来ないんだ。答えとして読むなら、鳩とかもめくらい違うから無かった、となるけど、どちらでも幸せが「なる」で言われてきたことは動かないよ。

しおり

ずっと「なる」で先のことだった幸せが、ここで急に「なかった」になるんですね。

最後の「ここ」と、結びの「海」

はかせ

最後のサビは1番のサビの形に戻ってくるけど、言葉が替わってる。「君といれない」だった行が「ここにいれない」になって、思い出の前の「ここ」は消えるんだ。

でもこんな関係のまんま

ここにいれない

My Hair is Bad『鳩かもめ』より

しおり

この「ここに」は、幸せが「なかった」と言われた「ここ」と、同じ場所なんですか?

はかせ

「ここ」は三回で、思い出が「ある」所、幸せが「なかった」所、「いれない」所。同じ場所と取るなら、幸せが無かった所が、いられない所になるけど、「ここ」が部屋か関係かは決めずに読むよ。「君」は2番のサビで最後で、問いの行も誰の幸せか名指さないんだ。

しおり

「いれない」と言いながら、「こんな関係のまんま」は1番のサビから残ってるのが、重たいです。

鳩は分かってたんだ

海じゃ飛べない

My Hair is Bad『鳩かもめ』より

はかせ

結びの二行は、曲の中でここに一度だけ出てくる。「ここにいれない」と「海じゃ飛べない」は、どちらも場所を言ってから「ない」で終わる形なんだ。「海」という語も、この曲ではここだけだよ。

しおり

言い切って終わる形が続くのが、なんだか残ります。問いのあとの「そうだね」の短さも、同じ止まり方に聞こえてきて。

はかせ

問いのすぐあとに、「そうだね」だけが置かれてるんだよね。そのまま歌は、結びの二行へ進む。

はかせのまとめ

問い

その幸せって、なんでここに無かったの?

答え

この歌は、ここに幸せが無かった理由を説明する文では言わない。ただ「幸せ」はそれまでずっと「なる」の形で先のこととして言われ、問いの行で初めて「ここにはなかった」と言われる、と読める。

次に聴くときは

「幸せ」のあとに続く言葉が、「なって」「なんない」から「なかった」へ変わるのを聴き比べてみて。

楽曲情報

曲名鳩かもめ
アーティストMy Hair is Bad
作詞・作曲椎木知仁
発売2024年7月31日