オリオン
YOASOBI
歌詞を考察
うたばなし
オリオン【YOASOBI】三つ星の歌なのに、歌詞の中には何人いるの?
はかせ歌詞を研究しているキャラクター
そうたバンドの曲が好きな聞き手のキャラクター
そうた
題の「オリオン」って、三つ星がテーマだって聞いたんだけど本当? でも聴いてると、三人も出てくる感じがしないんだよね。
はかせ
本当だよ。Ayaseは発表会で、ゲーム『オーバーウォッチ』の原作小説に出てくるキリコ、ゲンジ、ハンゾーの三人の関係を表すのに、「オリオン座の中央に並ぶ三つの星(オリオンのベルト)をテーマにしました」と話している。
そうた
三人って、歌詞の中の人のことなの?
はかせ
そこは別なんだ。作者が語ったテーマで、歌詞の人をその三人と同じ人とする言葉は、歌詞にないんだよ。
そうた
じゃあ三つ星は作者の話として置いておいて、歌詞の中の人は言葉で数えるしかないんだね。どこから数えたらいい?
歌い出しの九行に、人は何人いる?
はかせ
まずは歌い出しから。最初の九行で人が出てくるのは、このあたりだけなんだ。
変わりたい / 変われない 二人
分からない / 解らない まま
すれ違い もつれ合う
二つの恒星
そうた
あれ、「私」も「君」もいないじゃん。人っぽいのは「二人」と「二つの恒星」だけで、どっちも数だよね。
はかせ
名前でも呼びかけでもなく、数で言っているんだよね。だからこの4行は、二人を少し離れた所から見ている言い方だと読める。
そうた
でもさ、自分たちのことを「二人」って呼ぶこともあるじゃん。語り手がその片方ってこともない?
はかせ
それもあるね。「二人」は外からも中からも言える言葉だから、語り手が入っているかは、ここでは決めずに先へ持っていこう。
英語の7行で、「I」と「you」が出る
はかせ
そのすぐあと、英語の連が来る。まず最初の2行で、人の言葉が「I」と「you」で出てくるんだ。
I don't know 'bout everything
If you carry guilt or sin
そうた
この I と you って、さっきの「二人」なの? 英語になると急に誰かがしゃべりだす感じがする。
はかせ
I は全部は分からないと言うし、you が罪を抱えているかも「If」付きのままだね。でも「But I can see」で向きが変わって、「Ties that bind us」は「won't astray」、つまり us を結ぶ絆は外れない、それが見えている。
そうた
分からないことと、見えてることが一緒にあるんだね。日本語のほうでは、「私」はいつ出てくるの?
「私」が名乗った直後も「二人」
はかせ
英語が終わって、サビに入る手前。ここで語り手が初めて「私 気付いてた」と名乗って、すぐこう続くんだ。
夜空に寄り添い並ぶ
あの星のように
きっときっと
本当は二人
はかせ
名乗った直後なのに、「私たち」とは言わずに「本当は二人」、そして「想い合っていたのに」と続くんだ。
そうた
わざわざ「二人」って数えるなら、「私」は二人の外にいる人っぽくない? 三人目、みたいな。
はかせ
外から気付いていた人、という読みもできるね。一方で、この先には「私」を二人の片方と読みたくなる行も出てくるんだ。
サビで「君」が出て、2番の約束は君から
そうた
「私」は出たけど、そろそろ「君」が出てくる頃かな。ここまで一回もないよね。
はかせ
サビに入ってすぐ、この行に出てくるんだ。
君と生きたあの日々は今でも
はかせ
「君と生きた」日々のあと、「私」で始まる約束が2つ続いて、サビは「また一緒に笑い合いたいから」で終わる。ここで、「私」と君がいっしょにいた過去がはっきりするんだ。
そうた
「笑い合いたい」…あ、また「合う」だ。最初の「もつれ合う」も、さっきの「想い合っていた」も「合う」だったよね。
はかせ
ここまでで3回だね。もつれる星、想い合っていた二人、笑い合いたい「私」と、どれも相手のいる動きだよ。最後の「私」は相手と並ぶ側にいて、「私」を二人の片方と読む材料の一つになるね。
そうた
2番に入ると、昔のことを君に聞くところがあるじゃん。あそこには誰が出てくるの?
必ず帰ってくるって
はかせ
2番は、「ねえ君は覚えている?」を二度聞いて、思い出を2つ挙げる。泣き虫だった「私」を「抱きしめてくれたこと」と、この行のとおり帰ってくると言ってくれたこと。どっちも君から「私」へ向かう動きで、出てくるのは君と「私」だけなんだ。
そうた
約束してくれるのは君のほうで、「私」は受け取る側なんだね。なんか、ちょっと置いていかれた側の声に聞こえる。
英語が「We」に変わっても、人数は出ない
そうた
2番の英語って、1番とまるごと同じ? ギターで合わせてると、途中から違う気がしたんだよね。
はかせ
1番と同じ7行が戻ったあと、1番ならサビの前に行くところで、2番は英語のまま続くんだ。その中にこの2行がある。
We don't know 'bout everything
We differ in how we think
はかせ
1番の英語は「I don't know」で始まって、次は、you が罪を抱えているなら、という行だったね。
そうた
あ、I が We になってる。
はかせ
そう、you の罪の行は「We differ」の行に替わるんだ。ここで We を使うのに、何人かはこの英語のどこにも出てこないよね。
そうた
じゃあ英語のほうには three って出てくる? 三つ星の歌なら、どこかで言いそうだけど。
はかせ
一度もないよ。英語の部分は「with you and me」で閉じるし、us や We と合わせると、「私」を二人の片方と見る材料はそろってくる。
そうた
材料がそろってるなら、片方で決まりじゃん。
はかせ
そこが決まらないんだ。英語の I と you や「二人」を、日本語の「私」と「君」に結ぶ言葉は、ここまでのどこにもないからね。
そうた
ぼくは片方だと思って聴いてるな。でも言葉の上では、そこまで決められないんだね。
一人で背負ってきた、に「一人じゃない」
はかせ
2番の英語が終わって、日本語に戻る最初の行がこれなんだ。
一人 背負い続けてきたんだよね
はかせ
「背負う」は、歌い出しの「背負った運命」以来なんだ。あのときは「二つの恒星」と並んでいた言葉が、ここでは「一人」と一緒に出てくる。
そうた
でも、運命と、ここで背負い続けてきたものって、同じ重さなのかな。別のものかもしれなくない?
はかせ
別の重さかもしれないね。ただ、二つの恒星の横にあった「背負う」が、一人で背負ってきた話として君に言い直されて聞こえるんだ。続く「ねえ 忘れないで」の中身は、「君のことを想う人がいること」だよ。
そうた
「君のことを想う人」か。想ってるのは「私」じゃなくて「人」なんだ。
ほらね 必ず
見つけ出すから
一人じゃないよ
はかせ
「必ず」は、2番で君が帰ってくると言ってくれた言葉の中にあった。それがここで、見つけ出すと言う側の言葉として出てくる。言っているのは、流れからすると語り手だね。
そうた
帰ってくるって約束したのは君だったのに、今度は「私」のほうが探しに行くって約束してる。入れ替わってるじゃん。
はかせ
そしてすぐ「一人じゃないよ」と、さっきの「一人」を打ち消す。君を想う人がいることが、その中身だと取れるよ。
戻ってきた星の行に、「二人」がない
そうた
最後のサビの前で、1番の星の行がもう一回来そうな気がするんだけど。
はかせ
最後のサビのすぐ手前で戻るよ。1番では「夜空に寄り添い並ぶ」「あの星のように」のあと「きっときっと」「本当は二人」の順だった。言葉はほとんど同じで、並びが違うんだ。
ねえ いつの日か
きっときっと
寄り添い並ぶ
あの星のように
そうた
「きっときっと」が星の前に来てる。それに「本当は二人」がないし、「夜空に」も消えて、代わりに「いつの日か」が入ってる。
はかせ
1番の星は、二人が本当はそうだった姿で、「想い合っていたのに」と過去で受けていた。ここでは「いつの日か」が前に来て、いつか並ぶ姿として言われる。だから星の行が過去から先へ向きを変えたように聞こえるんだ。
そうた
星の行は、先を向いたんだね。じゃあ最後のサビでは、人の数はどうなるの?
君は 一人きりじゃないんだよ
はかせ
最後のサビでは、「君と生きた」の行がこれに替わる。「一人」はここで3回目で、また打ち消される。曲の最後まで数えても、人の数は「二人」「二つ」「一人」だけで、「三」は一度も出てこないんだ。
そうた
ぼくには、星の行からも「二人」が消えたのが、なんだか広く聞こえるかも。
はかせ
言わないままだから広く聞こえる、という受け取りは、星の行の並びに合っているね。
はかせのまとめ
問い
三つ星の歌なのに、歌詞の中には何人いるの?
答え
歌詞は「二人」と「一人」を数えても、「三」とは一度も数えない。「私」を二人の片方と取る材料は多いが言い切れず、はっきり数え直すのは、君は「一人」じゃないと打ち消す所だ。
次に聴くときは
2番で君が言った「必ず」が、今度は見つけ出すと言う側の言葉で戻るところを聴いてみて。
楽曲情報
| 曲名 | オリオン |
|---|---|
| アーティスト | YOASOBI |
| 作詞・作曲 | Ayase |
| 発売 | 2026年6月26日 |