夏夜のマジック
indigo la End
歌詞を考察
うたばなし
夏夜のマジック【indigo la End】「夏夜のマジック」で、僕は何を願ってるの?
はかせ歌詞を研究しているキャラクター
みお仕事帰りに歌を聴く聞き手のキャラクター
みお
題の「マジック」って、手品のことじゃないよね。夏の夜の魔法、みたいなたとえなのかな。
はかせ
題だけだと、どちらとも決めにくいんだよね。それより、歌詞の中で「マジック」がどう使われているかを見たほうが早いと思う。
みお
サビで「マジックで」って何度も繰り返してるでしょ。マジックで何をしたいのか、そこが気になってたの。
「強くなった気」って、どれくらい?
強くなった気がしてはしゃぐ君の顔を思い浮かべた
はかせ
歌い出しのところだね。「僕」は弱いままだと言いながら、強さには「今日」「少し」「気がして」と限りを付けている。強くなったと言い切ってはいない、と受け取れるんだ。
みお
その強さって、マジックのおかげなのかな。夏の夜だから強くなれた、みたいな。
はかせ
ここではまだ「マジック」は出てこないんだ。強くなった気と夏の夜を結ぶ言葉も無いから、マジックのおかげとまでは言えないね。
みお
弱いまま、でも今日は少し、って正直よね。強がり切れてない感じが、私はけっこう好き。
はかせ
強がり切れてない、は歌い出しに合うね。続く所は、祭りの時間に野良猫が鳴いている、という今の夜のことで、そこへ君だけが「だった」と過去で入ってくる。夜が重なるという言い方は、今の夜に君のいた夜が重なったとも、夜が何度も重なったとも取れるよ。
みお
夏が好きかどうかも、君のほうが好きだった、って君と比べてしか言ってないのよね。僕自身の夏が、ちょっと見えにくい。
「マジックで」の先に続く言葉
今夜だけのマジックで
歌わせて
今なら君のことがわかるような気がする
はかせ
サビに入ると「マジックで」が4回出てくる。そのあとに続く動詞は、ここの「歌わせて」と、後ろの「身を任す」の二つだけなんだ。君に会わせて、のような頼みは、このサビには無いんだよ。
みお
でも「わかるような気がする」も、マジックのおかげって言ってるんじゃない? マジックで君のことをわからせて、って。
はかせ
その取り方は、文の形からは打ち消せない。でも頼む形なのは「歌わせて」だけで、「わかる」には「ような」と「気がする」が重なっている。頼みというより、ぼんやりした手ごたえとして置かれている、と読んでいるよ。
みお
頼んでるのは、歌うことなのね。君のことは、「わかるような気がする」までで止まってる。
はかせ
サビの後ろ半分も見ておくと、「だけ」が「限り」に変わって、「身を任す」と言い切りになる。前で頼んで、後ろでは自分から委ねている形だね。
2番のあとの「歌わせて」
想いながら歩いた
打ち上がった花火を見て笑った君を思い出したよ
はかせ
1回目のサビが終わって、2番に入ったところだよ。この手前の2行に、歌を歌って、幸せや悲しみを摘んで、という言い方があるんだ。
みお
その「歌って」は、歌ってよ、って頼んでるの? それとも、もう歌ったことなのかな。
はかせ
迷うところだね。手がかりは、その続きが「歩いた」と過去の形になっていることなんだ。
みお
じゃあ、もう歌ったあとの話なのかな。
はかせ
そのつながりで、歌うことはもうしたこととして書かれている、と取れるね。ただ「歌って」だけを見れば、頼みとも取れるんだ。
みお
そのあとにまたサビが戻るでしょ。同じ「歌わせて」なのに、聞こえ方は変わるのかな。
はかせ
1回目と一字も変わらないよ。それでも歌ってきた話を聞いたあとだと、「歌わせて」が、今夜もいつもの歌を、という頼みにも聞こえてくる。
別れの歌は、僕を救う気がする
夏になると思い出す別れの歌も
今なら僕を救う気がする
はかせ
ここにしか無い4行だね。記憶をしまい込むのはもったいない、という呼びかけから、言葉、別れの歌と進むので、記憶が言葉を通って歌になる流れと読んでいるよ。主語が無いので、別れの歌の言葉が綺麗に聞こえるようになった、とも取れるけどね。
みお
最後の行、「今なら」で始まって「気がする」で終わってるよね。サビのあの行と形が似てない?
はかせ
似ているね。ただ「ような」が無いし、救う側も変わる。サビでは語り手が君のことをわかる側にいたのに、ここでは別れの歌が「僕」を救う側にいるんだ。
みお
「気がする」って、ここまでにほかにも出てきた?
はかせ
歌い出しの「気がして」、サビの「わかるような気がする」、この「救う気がする」。強くなった気も、君がわかる気も、救う気も、どれも「気がする」止まりなんだ。
みお
別れの歌なのに、悲しい顔の君が出てこないのよね。思い出すのは笑ってる君ばっかり。
はかせ
ここまでの君は、夏が好きだったり、花火を見て笑ったりしている。「別れ」という言葉も、この「別れの歌」で初めて出てくる。別れは場面ではなく、歌の形でだけ置かれている、と受け取っているよ。
3回目のサビの聞こえ方
みお
そこから最後のサビに入るでしょ。歌詞は前と同じなのに、聞こえ方まで同じなのかな。
はかせ
最後のサビも、1回目と一字も変わらない。これでサビは3回とも同じ8行だね。違うのは、直前に「今なら僕を救う気がする」を聞いていることなんだ。
みお
君がわかる気がするのと、僕が救われる気がするのが、同じ「今なら」の夜に並んで聞こえる、ってこと?
はかせ
並び順から、そう聞こえてくるね。二つをつなぐ言葉があるわけじゃない。どちらも「気がする」のままで、確かになったとは一度も言っていないんだ。
最後に、夏へ呼びかける
夏よ
ラララ歌わせて
はかせ
最後のサビのあとに、ここにしか無い7行が続く。夏の終わりという言葉は、ここで初めて出てくるんだ。歌が始まる時を夏の終わりの手前に置いている、と取れるね。
みお
サビの「歌わせて」も、本当は夏に向けて言ってたんじゃない?
はかせ
夏に向けてたのかもね。ただサビの「歌わせて」には、誰に頼むかの言葉が付いてなかった。ここで初めて「夏よ」と相手を呼んでいるんだ。
みお
それに、歌う中身が「ラララ」なのね。言葉じゃなくなるのはどうしてなんだろう。
はかせ
記憶が言葉になって歌になる、と読んだ流れの終わりで、歌う中身は「ラララ」になるんだ。歌が意味から離れて、声そのものになる結び、と読めるよ。
みお
「こぼれる2人を見守るから」って、私には僕と君のことに聞こえるな。
はかせ
そう聞こえるよね。ただ見守る主語も、2人が誰かも歌詞には出てこない。川谷絵音さんも J-WAVE『SONAR MUSIC』で「歌詞とかもこういうことだ、みたいなことを言ってない」と話しているよ。
同じサビが、違って聞こえる
みお
さっきは、マジックのおかげで君がわかる歌だと思ってた。今は、わかる「ような気がする」のまま歌わせてって言ってて、3回目はそこが心細い。
はかせ
「気がする」のままなんだよね。それでも3回目も、同じ「歌わせて」が戻ってくる。
はかせのまとめ
問い
「夏夜のマジック」で、僕は何を願ってるの?
答え
サビで「マジックで」に続くのは「歌わせて」と「身を任す」だけで、僕が頼んでいるのは歌うことだ。君のことは「わかるような気がする」止まりで、最後は「夏よ」と呼びかけて歌わせてと頼んでいる、と読める。
次に聴くときは
サビの「歌わせて」と、最後の「夏よ」「ラララ歌わせて」を聴き比べてみて。
楽曲情報
| 曲名 | 夏夜のマジック |
|---|---|
| アーティスト | indigo la End |
| 作詞・作曲 | 川谷絵音 |
| 発売 | 2015年6月17日 |
