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夜の踊り子【サカナクション】これって逃げる歌?それとも進む歌?

2026.10.244分で読めます

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しおり

この曲、跳ねて楽しそうなのに、「逃げる」って言葉がずっと気になってて。これって逃げる歌なんですか、それとも進む歌なんですか?

はかせ

「逃げる」が漢字で出てくるのは、実は1番の終わりなんだ。その前は、カタカナのカッコの中に「ニゲタ」が顔を出している。

夜に跳ねて、明日を素通り

はかせ

曲の頭は、雨上がりの夜に「僕」が小学生みたいに跳ねるところから始まる。そのあと君も、女学生みたいに同じ形で跳ねるんだ。まずは「僕」が跳ねた少しあとの行だね。

明日を素通り

(ヨルニニゲタダケ)

サカナクション『夜の踊り子』より

はかせ

「明日を素通り」のあと、朝も同じ形で素通りされて、明日と朝が続けて飛ばされるんだよ。間のカッコは、歌い出しの夜と合わせると、夜に逃げただけ、と受け取れる。そう読むと、この夜は明日と朝を避ける場所になっているんだね。

しおり

そのカッコのカタカナ、どうしてカタカナなんでしょう。君が跳ねるところにも、似たカッコが出てきますよね。

はかせ

カタカナにした理由は歌詞からは分からないけど、数えられることはあるよ。君の場面でも「ヨルニニゲタダケ」が同じ字で戻ってきて、ここまでで2回。変わるのは前のカッコだけで、見ていたふりが忘れたふりになるんだ。

しおり

ふりの中身は入れ替わるのに、閉じるのはいつも「ニゲタダケ」なんですね。逃げたことを、「だけ」で小さく言ってる感じがします。

「逃げる」に付いた言葉は?

はかせ

1番の終わり、跳ねる二つの場面のあとに来るのがこの2行だよ。

どこへ行こう どこへ行こう ここに居ようとしてる?

逃げるよ 逃げるよ あと少しだけ

サカナクション『夜の踊り子』より

しおり

一つの行の中で「どこへ行こう」と言いながら、「ここに居ようとしてる?」って聞いてますよね。行きたいのか居たいのか、どっちなんでしょう。

はかせ

この行は、どちらとも答えないまま「?」で終わるんだよね。次の行で初めて漢字の「逃げる」が出てきて、その後ろには「あと少しだけ」が付いてるんだ。

しおり

「あと少しだけ」って、ずっと逃げるんじゃなくて、ちょっとの間だけ、って区切ってるのかもしれないです。

はかせ

逃げる時間に終わりが付いてるんだよね。しかもこの「だけ」は、カッコの「ニゲタダケ」と同じ言葉なんだ。ここは、ずっと続ける逃げとしては言ってない、という読みだよ。

君と音が消えたあとの逃げ

はかせ

2番に入ると、跳ねた形のまま、動詞が「消えた」になる。君が蜃気楼みたいに消えて、雨の音も同じ「消えた」で消えるんだ。カッコの声は3回目の「ヨルニニゲタダケ」で閉じて、出てくるのはここが最後だよ。

逃げても 逃げても 音はもうしなくて

サカナクション『夜の踊り子』より

はかせ

その手前で、問いの行は「ここに居ようとしてる?」まで1番とまったく同じ言葉で戻ってくる。変わるのは次の行で、「あと少しだけ」が「音はもうしなくて」になった。この「音」は、消えた雨の音と同じ言葉なんだ。

しおり

でも、逃げること自体は続けてますよね。それだけで、逃げるのが効かなくなった、とまで言えるんですか?

はかせ

手がかりは「逃げても」の「ても」だね。そうしても何も変わらない、っていう言い方なんだ。すぐあとに音がもうしないと続くから、ここで逃げが効かなくなった、と受け取れる。

しおり

しんとしてる、ってことなんでしょうか。跳ねていた夜に、もう雨の音みたいに応えてくれるものが残っていない、というか。

「今」から数え直される時間

はかせ

曲の後半、同じ行がまとまって戻ってくるサビに入るよ。最初の2行がこれ。

雨になって何分か後に行く

今泣いて何分か後に行く

サカナクション『夜の踊り子』より

はかせ

2行は頭の言葉だけが違って、「雨になって」の場所に「今泣いて」が入る。「今」が歌詞に出てくるのは、ここが初めてなんだ。このあとも「今泣いて」の行が続いて、「何分か後」が何度も言われ、最後は「何年か」まで伸びる。

しおり

1番では明日も朝も素通りしてましたよね。この「何分か後」は、あの素通りした先とつながっているんですか?

はかせ

明日や朝と「何分か後」を同じものだと言う言葉は、歌詞の中には無いんだ。だからここは読みだけど、前半で避けていた先の時間が、今度は泣いている「今」から数えられているんだね。

しおり

素通りしていた先を、泣きながら少しずつ数え直してるんですね。明日って大きく言わずに、何分か後って刻むのが、なんだか好きです。

「逃げるよ」が「行けるよ」に

はかせ

サビとサビの間に、一度だけ出てくる2行があるんだ。その一つ目がこれだよ。

行けるよ 行けるよ 遠くへ行こうとしてる

サカナクション『夜の踊り子』より

はかせ

1番の「逃げるよ 逃げるよ」と同じく、「〜るよ」を二度重ねる形だね。動詞だけが「逃げる」から「行ける」に替わってる。後ろも「ここに居ようとしてる?」と同じ「〜ようとしてる」の形で、こっちには「?」が無いんだ。

しおり

じゃあ、ここで逃げるのをやめて、進む歌に切り替わったってことじゃないんですか?

はかせ

ここから新しい決意が始まる、と聞くこともできる。でも、逃げるよ、逃げても、行けるよ、と同じ重ね方が続いていて、逃げを打ち消して出てきた言葉には見えないんだ。逃げる形をそのまま使って、行くほうへ移っていく歌として読みたいね。

しおり

「行く」じゃなくて「行ける」なのも気になります。行くって決めたというより、行けるよって自分に言い聞かせてるみたいじゃないですか?

「どこへ」の答えは場所?

はかせ

言い聞かせる、か。そのあとに続く間の2行では、「遠くへ」や、自分の思う向きといった、行き先らしい言葉が出てくるよ。

しおり

でもそれ、場所の名前じゃないですよね。最初から「どこへ行こう」って言ってたのに、答えはどこだったんでしょう。

笑っていたいだろう

サカナクション『夜の踊り子』より

はかせ

泣いての行が続いたあとに「笑う」が出てくるのは、歌詞でここだけなんだ。行き先は、笑っていたいっていう状態として残る、という読みもできるよ。誰に向けた言葉かは決めないでおくね。

しおり

逃げる歌か進む歌か、って分けて聴こうとしてたのが、ずれてたのかもしれないです。逃げるよ、も、行けるよ、も、同じ形で並んでたんですね。

はかせ

分けて聴きたくなるのは自然だよ。間に「逃げても」と、泣いての行が挟まってるからね。

はかせのまとめ

問い

これって逃げる歌?それとも進む歌?

答え

進む歌に切り替わったとも聞けるが、「逃げるよ」と同じ形のまま動詞が「行けるよ」に替わる歌として読める。行き先は場所でなく、「笑っていたいだろう」という言葉として残る、と読める。

次に聴くときは

「逃げるよ 逃げるよ」と「行けるよ 行けるよ」を聴き比べて、入れ替わる動詞に耳を向けてみて。

楽曲情報

曲名夜の踊り子
アーティストサカナクション
作詞・作曲Ichiro Yamaguchi
発売2012年8月29日