届かない
Saucy Dog
歌詞を考察
うたばなし
届かない【Saucy Dog】「最後だけズルいよ」って、何がズルいの?
はかせ歌詞を研究しているキャラクター
みお仕事帰りに歌を聴く聞き手のキャラクター
最後だけズルいよ
泣かないでよ
みお
この「ズルいよ」が、帰り道でずっと引っかかってるの。責めてるにしては、そのあとが「泣かないでよ」でしょ。何がズルいのか、よく分からなくて。
はかせ
「最後だけ」の「だけ」が気になるんだ。最後じゃない時の君とは、どこか違うところがある、という言い方だよね。
みお
最後の君が、いつもと違ったってことになるのよね。いつもの君が分からないと、何がズルいのかも決まらない感じがする。
はかせ
その、いつもの君は歌の頭に出てくるよ。
悲しい時も笑う君と、読む「僕」
みお
歌い出しって、君の話から始まるのよね。どんな人として出てくるの?
はかせ
曲の頭は、君の癖が並ぶところなんだ。照れるとおどけて笑う、嬉しいと鼻歌を歌う。その続きに、こう来る。
悲しい時も平気な振りして
笑ったりするから余計心配だよ 君は
はかせ
悲しい時の君と、それを受けた「僕」が、一度に入ってるんだよね。みおには、この二人がどう見える?
みお
君は悲しいのに、平気な振りして笑ってる。で、「僕」はそれを見て、かえって心配になってるのよね。笑いの下が見えちゃってる人なのかも。
必死に隠そうとしてみても分かってしまうよ
はかせ
その見えちゃうのを、「僕」は自分で言ってるんだ。隠そうとしても「分かってしまうよ」ってね。君を知っているというのは君の隠し方を知っていること、ここはそう読んで進めようか。
喧嘩のあとも、鍵を返す日も
みお
そのあと、喧嘩の話とか鍵を返す話になるでしょ。あれも、笑って隠す君とつながってるの?
はかせ
忘れたように振る舞っていたのが君だと取れば、「平気な振り」と同じだね。見せる様子と中身がずれてる形なんだ。
みお
それなら「僕」は、そのずれにも気づいてたことになるのね。もう会わなくなった人のことも、その読み方は続くのかな。
はかせ
鍵をポストに返す場面で、「僕」は君がその角から曲がって来る気がしていたと言うんだ。もう会わない相手の次の動きを思い浮かべていて、君を読む癖が君のいない場所にまで残っているみたいに見えるよ。
消しても「思い出してしまう」
はかせ
別れたあとの話に進むと、「僕」はやりとりを消して、ロック画面を変えて、写真も空にしてみる。それでも駄目だった、と言ったあとがこれ。
思い出してしまうんだよ
みお
この「しまう」って、歌い出しの「分かってしまうよ」と似てない?
はかせ
似てるね。ここまでで「〜てしまう」の形が出てくるのは、この2か所だけなんだ。
みお
「分かってしまう」は君を見ている時で、「思い出してしまう」は君がいない時よね。場面が違うのに、同じ形なんだ。
はかせ
そう並べて読むと、君の隠したものが見えてしまうことも、消しても思い出してしまうことも、「僕」の思い通りにならない働きとして並んで見えてくるよ。
二度目の「離れていた」
みお
終わりのほうで、どこかで聞いたような言い方が出てくる気がするの。何だったかな。
はかせ
終わりを振り返る所に、「さよならまで離れていたんだね」があるんだ。喧嘩の話で距離に気づいていたと言った時と同じ「離れていた」が、「んだね」と確かめる形で戻ってくる。見抜いていたはずの「僕」が、ここで確かめ直しているように聞こえるよ。
みお
距離に気づいてたって言っていた人が、終わってから確かめ直してるのよね。見抜いていたはずなのに、全部は読めてなかったのかな。
笑っていた君が、あの時だけ黙った
はかせ
曲の後半、二人が手を繋いで歩いた通りを、少し間をあけて歩く場面になる。そのあと「僕」が君について言うのがこれ。
どんな時も笑っていた君がさ
なんであの時だけ黙ってたんだ
はかせ
問いの形で話すのは、歌の中でこの「なんで」だけ。歌い出しで「分かってしまうよ」と言い切っていた「僕」が、ここでは理由を問う側に回って聞こえるね。
みお
でも、黙るのも隠し方のひとつじゃない?笑う代わりに、黙ってこらえてた、とか。
はかせ
その読みも消えないよ。「あの時」がいつかは書かれていない。ただ「笑」の字は、歌い出しの2回と「笑っていた」を含めて3回とも君の動作で、はじめの方では照れも悲しさも隠す形だから、笑いの出なかった一度は、隠し方から外れた時と読めるんだ。
みお
黙った理由は、問いの形のまま置かれてるのよね。答えを言わないで終わるのが、ちょっと引っかかる。
「届かない」は歌詞に無い言葉
届きそうな後ろ姿
見つめるだけの僕と君の距離
はかせ
秋空の下の、別れの場面だね。題の「届かない」は歌詞には出てこなくて、「届」の字があるのはこの「届きそうな」だけなんだ。題は、それを打ち消した形になってる。
みお
届きそうなのに、見つめるだけなのよね。どうして手を伸ばさないの?
はかせ
手を伸ばす言葉は、歌詞に無いんだ。歌い出しから君を見てきた「僕」は、ここでも見る側のまま立っているように見えるよ。
みお
「僕と君の距離」って、喧嘩のところで気づいてたと言っていた距離にも通じるよね。そこでも「僕」は、気づいてるだけだったのかも。
「最後だけ」は、何がズルいの?
振り返って手を振ったり
「またどこかで会えたら」とか
君らしいやと思ったけど
はかせ
最後の場面。振り返って手を振り、「またどこかで会えたら」と言う君を、「僕」は「君らしいや」と受け取る。そのうえで「けど」と返して、「最後だけズルいよ」に続くんだ。
みお
明るく手を振って、また会えたらなんて言えちゃう。そういう君らしい別れ方そのものがズルい、ってことじゃないの?
はかせ
それも残る読みだね、ただ「だけ」が気になるんだ。「だけ」は5回あって、3回は「見つめるだけ」のような「〜にすぎない」の意味。でも「あの時だけ」と「最後だけ」の2つは、君がいつもと違った時を切り出してる。
みお
あ、「あの時だけ」と同じ置き方なのね。じゃあ「最後だけ」で違ったのは、君の何なのかな。手振りは「君らしい」んだよね。
はかせ
手振りや「またどこかで会えたら」は「君らしい」側だね。手がかりは「泣かないでよ」で、悲しい時も笑って隠してきた君が最後だけは隠さなかった、ここでは「僕」がズルいと言うのはそこだ、と読むよ。泣いたとは書かれていないけど。
みお
そう思うと「泣かないでよ」が、責める言葉じゃなくて、隠さなかった君に向けた言葉に聞こえてきた。
はかせ
歌のいちばん最後の行が、その「泣かないでよ」なんだ。そのあとに君の返事は出てこなくて、そこで歌は終わるよ。
はかせのまとめ
問い
「最後だけズルいよ」って、何がズルいの?
答え
「最後だけズルいよ」のズルさは、悲しい時も平気な振りで笑って隠していた君が、別れの最後だけ悲しさを隠さなかったことだと読める。ただ、君が泣いたとは歌詞に出てこない。
次に聴くときは
「最後だけ」の「だけ」を、「あの時だけ」と聴き比べてみて。
楽曲情報
| 曲名 | 届かない |
|---|---|
| アーティスト | Saucy Dog |
| 作詞 | 石原慎也 |
| 作曲 | Saucy Dog |
| 発売 | 2019年10月2日 |
