パドドゥ
ヨルシカ
歌詞を考察
うたばなし
パドドゥ【ヨルシカ】「そう考えたっていいよ」の「そう」は、何を指すの?
はかせ歌詞を研究しているキャラクター
しおり言葉が好きな聞き手のキャラクター
そう考えたっていいよ
しおり
最後のサビの結びのこの一行、ノートに書き写したら、なんだか宙に浮いている気がしたんです。
はかせ
宙に浮く感じは、どの言葉から来ているんだろうね。「考えたっていいよ」だけなら、よくある励ましの言い方だよね。
しおり
「そう」です。「そう考えた」の中身が、この一行には無いんです。何を考えていいのか、ここだけだとつかめなくて。
「貴方」は、どこにいる人?
はかせ
「そう」は前にあるものを指す言葉だから、手前から読んでいこう。1番の前半は、風が頬を撫でて、夏草が肌に擦れて、と体に触れる感じで始まって、この一行に行き着くんだ。
思い出の中に貴方はいる
しおり
「思い出の中に」いる、ということは、貴方はいま目の前にはいないんですか?
はかせ
「貴方」と呼ぶのは曲の中でこの一回だけで、居場所は「思い出の中」なんだ。同じまとまりの中でも、「僕ら」はこの場所を「覚えてる」と言っている。記憶をたどるところから始まる歌だと読めるね。
しおり
1番の後半にも、昔の方を向いているような行がありますよね。
はかせ
「あの頃指差して進むまま」の行だね。指差した「あの頃」の方へ進む、と取れば進む先は過去になるけれど、歌詞から確かなのは、「あの頃」を指差して進んでいる、という動きまでなんだ。
最初のサビの結びは何を許す?
はかせ
ここから1回目のサビ。かぎかっこで囲まれていて、地の文とは分けて置かれた言葉なんだ。
「さぁさぁもっと踊っていようよ
腕を引かれるまま、情け無い顔のままで
一生踊って暮らしていようよ
もう考えないでいいよ」
しおり
結びの「もう考えないでいいよ」、何を考えていたのかが気になります。どこかに出てきましたか?
はかせ
何を考えていたかより先に、「もう」が付いているのが引っかかってね。
しおり
「もう」があると、それまでずっと考えていたみたいです。続いてきたものを、ここで下ろしていいって。
はかせ
「もう」は考えることが前から続いていた言い方になる。だから、考え続けてきたことをここで止めていい、という許しとして読めるね。かぎかっこが誰の言葉なのかも、何を考えていたのかも、歌詞には出てこないけれど。
「今」は、どこで顔を出す?
はかせ
2番に入ると、1番と同じ並びが戻ってくる。風が頬を撫でて、「不格好」が来て、風に流されて、と順番はそのままで、中身の言葉が入れ替わるんだ。
あの夜を僕らは覚えてる
しおり
「あの夜」。1番には、夜の言葉は無かったですよね?
はかせ
無いね。1番は雲間や夏草、田舎道と外の景色ばかりで、「夜」の字はここが最初。覚えている時間が、夏休みの校舎の夜へ寄っていくんだ。
胸を焦がせ今は泣き止んだ顔のままで
はかせ
2回目のサビでは、この行の「今は」で、曲に「今」という言葉が入ってくる。1回目に「腕を引かれるまま」があった行が、「胸を焦がせ」と強く言う形にも変わっているね。
しおり
「あの頃」「あの夜」、それから「今」。指している時が、だんだん手前に来てる感じがします。
疲れたら寝ればいいよ」
はかせ
結びも変わった。1回目は「もう考えないでいいよ」、ここは「疲れたら寝ればいいよ」で、「考え」という言葉そのものが消えているんだ。
しおり
止めていい、じゃなくて、疲れたら寝ていい、なんですね。考えるかどうかの話から、もう離れてる。
覚える側から、想い出になる側へ
はかせ
2番のサビが終わったあと、一度だけ出てくるところがある。かぎかっこの外で、夜の校庭での二人だけの舞踏会が、場面として語られるんだ。
今だけの想い出になろう
はかせ
1番でも2番でも、「僕ら」は場所や夜を「覚えてる」側だった。ここでは「僕ら」が想い出に「なろう」としている。たどる側から、記憶そのものになる側へ回った、と読めるね。
しおり
でも「想い出になろう」は、今夜を想い出として残しておこう、くらいの意味かもしれないです。それなら覚える側のままですよね?
はかせ
その取り方もできる。どちらに取っても、ここで想い出になるのは「今だけ」なんだ。「今」はこれで二度目で、思い出の中身が「あの頃」や「あの夜」から、今のことに移っている。
しおり
どっちに取っても今のことなら、「今だけの」って言い切るのが、ちょっと切ないです。
最後のサビで、踊りはどう変わる?
はかせ
最後のサビに入ると、かぎかっこが開いて、今度は途中で閉じずに長く続く。出だしの「さぁさぁもっと踊っていよう」の次に来るのが、この行なんだ。
深く息を吸うように
しおり
1回目は腕を引かれて、2回目は「胸を焦がせ」でした。そのあとに来るのが「息」って、ちょっと意外です。
はかせ
ここでは、踊りが息を吸うことにたとえられているんだ。
しおり
引かれるんじゃなくて、自分で深く吸って、自分の息で続けていく踊りみたいです。踊りがやっと、自分のものになったような。
最後の「そう」は何を受けている?
はかせ
最後のサビの後半では、1回目と同じ形がもう一度出てくる。踊りへの誘い、顔の話、一生踊って暮らす話、そして結び、の四つだね。
いつか出会えるならふざけた笑顔のままで
一生踊って暮らしていようよ
はかせ
ここで「いつか」が来る。語り手から見て過去・今・先の一点を指す言葉だけ拾うと、「あの頃」「あの夜」、次に「今」、そしてこの「いつか」。「いつか」は曲の中でここ一度きりなんだ。
しおり
でも先のことなら、「一生踊って暮らしていようよ」が1回目のサビからずっとありました。先の話は、ここが最初じゃないですよね?
はかせ
うん、「一生」は1回目のサビから毎回あって、踊りが先へずっと続く長さを言っている。「いつか」は長さじゃなくて、先のある一点なんだ。
しおり
その先の一点のあとの結びは、どうなっているんですか?
はかせ
その一点のあとに、引っかかった一行がある。結びを三つ並べると「もう考えないでいいよ」「疲れたら寝ればいいよ」「そう考えたっていいよ」で、「考え」は最初と最後だけ。止めていいという許しが、「そう」と指した考えを許す形に入れ替わっているんだ。
しおり
じゃあ「そう」は、すぐ前の二行を指しているんですか?
はかせ
直前の二行と取るなら、「いつか出会えるなら」と条件を付けたまま、「ふざけた笑顔のままで」一生踊っていよう、と考えてもいい、という読みになる。1回目は中身を言わずに、考えるのを止めていいと言ったけど、ここは中身を指して、考えることを許しているんだ。
しおり
でも、ずっと踊っていようという最後のサビの呼びかけ全部を、「そう」で受けているとも読めませんか?
はかせ
読めるね。呼びかけ全体を受けるとも取れて、指す先は一つに決められない。それでも、考えるのを止めていい、から、中身を指して考えていい、に変わったことは、どちらに取っても動かないんだ。
しおり
「出会える」って、初めて会うことですか?それとも、思い出の中の貴方ともう一度、なんでしょうか。
はかせ
そこは迷うところなんだよね。貴方は1番で「思い出の中」にいたけど、その人と先の出会いをつなぐ言葉は、歌詞のどこにも無い。初めてか再会かは、歌詞だけでは決められないね。
しおり
あ、でも歌詞は「そう考えたっていいよ」で終わらないんですね。そのあとにもう一度「さぁさぁもっと踊っていよう」が来て閉じてる。
はかせ
そうなんだよね。宙に浮いて見えた一行は、直前の二行と次の誘いのあいだにあったんだ。
はかせのまとめ
問い
「そう考えたっていいよ」の「そう」は、何を指すの?
答え
「そう考えたっていいよ」の「そう」は、直前の「いつか出会えるなら」から続く二行の中身を受けると読める。ただ最後のサビの呼びかけ全体を受けるとも取れ、指す先は一つに決められない。
次に聴くときは
最後のサビの「いつか出会えるなら」と「そう考えたっていいよ」を、続けて聴いてみて。
楽曲情報
| 曲名 | パドドゥ |
|---|---|
| アーティスト | ヨルシカ |
| 作詞・作曲 | n-buna |
| 発売 | 2023年4月5日 |
